事前調査 分析による調査

05-Mar-2021

 

石綿指針

2 建築物等の解体等の作業における留意事項

2-1 事前調査

2-1-3 分析による調査

石綿則第3条第2項 に規定する分析による事前調査は、次の(1)から(4)までに定めるところによること。

(1)石綿含有の分析は、十分な経験及び必要な能力を有する者が行うこと。
(2)吹付け材については、石綿をその重量の 0.1 パーセントを超えて含有するか否かの判断のみならず、石綿の含有率についても分析し、ばく露防止措置を講ずる際の参考とすることが望ましいこと。
(3)建築物等に補修若しくは増改築がなされている場合又は建材等の吹付けの色が一部異なる場合等複数回の吹付けが疑われるときには、吹付け材が吹き付けられた場所ごとに試料を採取して、それぞれ石綿をその重量の 0.1 パーセントを超えて含有するか否かを判断すること。試料の採取に当たっては、表面にとどまらず下地近くまで採取すること。
(4)分析方法は、日本工業規格(JIS)A1481-1、A1481-2 若しくは A1481-3 又はこれらと同等以上の精度を有する分析方法を用いること。

 

https://zouplans.net/archives/3406

https://zouplans.net/archives/3415

 


 

 




 

 

具体的な留意事項

 

《(1)分析者》

1.
石綿指針2-1-3の(1)中「十分な経験及び必要な能力を有する者」には、公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」により認定される A ランク又は B ランクの認定分析技術者一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修修了者」や「アスベスト偏光顕微鏡インストラクター」がある《平成24年 5月 9日 基発第 0509 第 10号。一部改正平成26年 4月23日基発 0423 第 7号》。これら資格者は、各協会のホームページにも掲載されている。

 

《(3)吹付け材の試料採取方法》

2.
石綿指針2-1-3の(3)中「表面にとどまらず下地近くまで採取すること」とあるのは、多層の吹き付けが行われていた場合に表面と内部とで石綿の含有の有無等が異なる場合があるためである。《平成24年 5月 9日 基発第 0509 第 10号》また、 色違いの部分や複数回吹きつけがなされた場合は、それぞれの施工部位を別の建材と判断し、 それぞれの施工部位で3箇所以上採取する必要がある。

 

《(4)分析方法》

3.
石綿指針2-1-3の(4)中「これと同等以上の精度を有する分析方法」とは、建材中の石綿含有率の分析方法について」(平成26年3月31日 基発0331第31)の「記の2」に示す方法である。《平成26年 3月31日 基発 0331 第 31号》
よく用いられる JIS A 1481 規格群をベースとした方法の概要については、「石綿障害予防規則第3条第2項に基づく分析の流れ」(下図)のほか、以下の 1.と 2.の通りである。

石綿障害予防規則第3条第2項に基づく分析の流れ

 

  1. 事前調査に係る採取試料中の石綿分析方法としては、石綿含有の有無と種類についての定性分析方法と、石綿がどの程度含まれているかを分析する定量分析方法がある。我が国では、石綿をその重量の 0.1パーセントを超えて含有するか否かを判断するための定性、定量分析法として厚生労働省『石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル』(1.20版)(第3章から第7章)により実施する。
    同マニュアルの定性分析方法1(第3章)は、 実体顕微と偏光顕微鏡により定性分析する方法である。 定性分析方法2(第4章)はX線回折分析法と位相差分散顕微鏡法を併用した定性分析方法で判定基準に基づいて石綿含有の有無を判断する方法であり、定量分析方法1(第5章)は、X線回折分析法による定量分析方法で石綿の質量を定量し、試料全体に対する石綿の質量百分率(%)を求める方法である。定量分析方法2(第6章)は、偏光顕微鏡を用いた定量分析方法であり、定性分析方法3第7章 は電子顕微鏡法による定性分析方法である。
  2. 平成25年度に厚生労働省委託事業「適切な石綿含有建材の分析の実施支援事業」の下で設置された検討委員会によって「アスベスト分析マニュアル」(1.00版)が策定され、その後も逐次改訂を行い、現在は『石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル』(1.20版)が 発行されている。「アスベスト分析マニュアル」は、その事前調査においてアスベストの有無を適切に分析するために、分析者に詳しい情報と最新の知見に基づくノウハウを伝えることを目的に策定したものである。分析者および分析依頼者は本マニュアルの留意点を参考に注意を払い、活用すること。

 

4.
煙突断熱材の分析の留意事項
煙突用の断熱材は石綿の含有率が80%以上と高いにもかかわらず、実際の分析ではアモサイト含有率が低値を示す場合があるが、これは、重油等の燃焼により発生したSOxガスと煙突内の建材に由来するカルシウムやナトリウム等が反応して生成した硫酸ナトリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩の蓄積により、見かけ上低くなることが原因であり、X線回折分析法の定性分析で硫酸塩が確認された場合には、分析結果報告書に除去対象の石綿含有率は分析値よりも高い可能性があることを記載し、当該作業者に注意喚起する事が重要である。

 



5.
バーミキュライトなどの分析の留意事項

  1. 吹付けバーミキュライトの分析は、「アスベスト分析マニュアル」の定性分析方法1(第3章: 偏光顕微鏡法 又は 定性分析方法2(第4章)で実施する。 吹付けバーミキュライトの分析を行う場合は、同マニュアル第4章はX線回析分析法での調査のみの判定となっているが、加えて顕微鏡による繊維の有無の確認も行うことが望ましい。
    また、その定性分析方法2(第4章)では吹付けバーミキュライトに含まれる石綿の分析はX線回折分析法で実施することになっているが、意図的に加えられた石綿は0.8%以上とされており、それ以外に原石に混在する不純物として石綿が含まれる場合は1%以下の低濃度のため、分析操作やX線回折分析時のピーク処理が適切に行われなかった場合には過剰に「石綿含有あり」として判定される場合がある。「石綿含有あり」となった場合には位相差・分散顕微鏡で石綿繊維を確認することが望ましい。「石綿含有あり」で位相差・分散顕微鏡で石綿繊維が確認できなかった場合は、分析操作やX線回折分析時のピーク処理の見直しが必要である。
  2. バーミキュライトに不純物としてウィンチャイト及びリヒテライトが含まれる場合がある。「アスベスト分析マニュアル」の定性分析方法1(第3章:偏光顕微鏡法)はこれらを区分することが可能である。 同マニュアルの定性分析方法2(第4章)、定量分析方法1(第5章:X線回折分析法)ではトレモライトとして判定されるが、これらを区分するため改めて分析する必要はなく、他の分析方法によりウィンチャイト及びリヒテライトが含有していることが明らかになった場合には、石綿障害予防規則に準じたばく露防止対策を講ずる必要がある。

 

6.
天然鉱物中の石綿含有率の分析方法等や関係資料は、厚生労働省のウェブサイト(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/mortar/index.html)にも掲載されているので必要に応じ参照すること。

 

《現地調査から分析までの責任分担の明確化》

7.
事前調査の一連の過程では、

  • 現地調査において同一材料範囲の判断
  • 試料採取において同一材料範囲のうちどの箇所から試料採取するか判断

を行う。これらは石綿の有無に関する重要な判断であり、これらの判断の責任者が誰であるか不明確なまま、事前調査を行ってはならない
また、一部解体や改修工事であれば、工事内容によって調査すべき建材の範囲が異なってくるため、工事内容に応じて調査対象建材を適切に判断しなければならない。

 

8.
具体的には、次の通りである。

  • 石綿則上は同一材料範囲の判断までが第3条第1項に基づく現地調査の一環であるが、試料採取を外注する際に、同一材料範囲の判 断もあわせて依頼するのであれば、そのことを明示して依頼することが必要である。
  • 試料採取を行う際に、採取作業者とは別の者が、採取個所を指示(判断)する場合もある。
    採取作業者だけでなく、採取個所の指示者(判断者)の氏名も報告書に明記する。
  • 分析機関が試料採取に関与しない場合には、試料採取者は、採取した試料ごとに、試料採取履歴(下図)に求められている内容について記入し、試料と一緒に分析機関に委託する。また、分析機関に試料採取者の情報を伝え、分析機関が作成する分析結果報告書には、当該試料採取者の情報を記録させる必要がある。
試料採取履歴
試料採取履歴

 

9.
現地調査における同一材料範囲の判断だけでなく、試料採取箇所の判断を適切に行う観点からも、石綿指針2-1-2の者が行うことが望ましい。


 

《試料採取時の石綿ばく露防止》

10.
試料採取を含む一連の事前調査は、解体・改修工事や石綿除去工事全体で見たときに、労働者の石綿ばく露を最小化することを目的に行うものである。したがって、試料採取中に労働者が石綿にばく露するのであれば本末転倒であり、試料採取では、石綿粉じんを飛散させないこと、採取者が粉じんの吸入を防ぐことを基本とすべきである。

 

11.
試料採取は、試験研究の業務であることから石綿作業主任者の選任義務はないが、労働者の(試料採取作業者)の石綿ばく露防止の観点から、石綿作業業主任者の指揮の下(又は本人が)、行うことが望ましい

 

12.
具体的には、湿潤化や保護具の着用等が必要であるが、特に吹付け材など飛散性の高いものについては、試料採取時に粉じんを飛散させないように、霧吹きなどを用いて常に湿潤させながら実施するとともに、採取者が粉じんを吸入しないように防じんマスク、手袋を装着し、表面が滑らかでポケットのない保護衣(JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服タイプ5または同等品)を着用することが必要である。

 

《試料採取後の石綿飛散防止》

13.
試料採取したときは、採取痕から粉じんを再飛散させないよう適切な補修の手段を講じることが必要である。

 

14.
適切な補修を行う観点から、石綿指針2-1-2の者が行うことが望ましい。

 


 

《試料の採取箇所数と採取量》

15.
試料採取箇所は、同一建材ごとに、原則として当該施工部位の3箇所以上から採取しなければならない。

 

16.
1箇所当たりの試料採取の必要量等は、厚生労働省 「アスベスト分析マニュアル」、JIS A 1481-1 や JIS A 1481-2 を参照すること。

 

 




 

 


石綿障害予防規則

(事前調査)

第三条 事業者は次に掲げる作業を行うときは、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)について石綿等の使用の有無を目視設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。
 建築物工作物 又は 船舶の解体破砕等の作業石綿等の除去の作業を含む。以下「解体等の作業」という。)
二 第十条(*1) 第一項の規定による石綿等の封じ込め 又は 囲い込みの作業

2 事業者は、前項の調査を行ったにもかかわらず当該建築物工作物 又は 船舶について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無を分析により調査し、その結果を記録しておかなければならない。ただし当該建築物工作物又は船舶について石綿等が吹き付けられていないことが明らかである場合において、事業者が、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない

3 事業者は、第一項各号に掲げる作業を行う作業場には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。
一 第一項の調査(前項の調査を行った場合にあっては、前二項の調査。次号において同じ。)を終了した年月日
二 第一項の調査の方法及び結果の概要

 

(*1) 第十条

 事業者は、その労働者を就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物(次項及び第四項に規定するものを除く。)に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該吹き付けられた石綿等又は保温材、耐火被覆材等の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならない。

2 事業者は、その労働者を臨時に就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物第四項に規定するものを除く。)に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、労働者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させなければならない。

3 労働者は、事業者から前項の保護具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

4 法第三十四条の建築物貸与者は、当該建築物の貸与を受けた二以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、第一項に規定する措置を講じなければならない。

 






















https://zouplans.net/archives/3369

https://zouplans.net/archives/3383

コメントを残す