事前調査 発注者からの石綿等の使用状況の通知

27-Feb-2021

 

石綿指針

2 建築物等の解体等の作業における留意事項

2-1 事前調査

2-1-1 発注者からの石綿等の使用状況の通知

建築物等の解体等の作業又は石綿等の封じ込め若しくは囲い込みの作業を行う仕事の発注者(石綿則第8条に規定する発注者をいう。)は、同条に基づき、設計図書、過去の調査記録等石綿等の使用状況等に係る情報を有する場合には、当該仕事の請負人に対して、これを通知すること。

石綿則第8条
(石綿等の使用の状況の通知)
第八条 第三条第一項各号に掲げる作業を行う仕事の発注者(注文者のうち、その仕事を他の者 から請け負わないで注文している者をいう。)は、当該仕事の請負人に対し、当該仕事に係る建築物、工作物又は船舶における石綿等の使用状況等を通知するよう努めなければならない。

 

 




 

 


 

具体的な留意事項

 

 

① 発注者は、建築物等における石綿等の使用状況等を把握している場合を含め上記「石綿障害予防規則第3条」に基づく事前調査を請負人に着実に実施させる必要があります。
既存の調査は、劣化等による飛散を防止することが目的のため、いわゆるレベル1又はレベル2建材のみを対象としたり、飛散のおそれのある露出している部位のみを対象としたりするのが通常であります。 また、法的にも、請負人(施工者)は発注者からの「石綿なし」との情報のみだけで、事前調査を省略することはできません
したがって、発注者は、単に石綿の有無を伝えるだけでなく、請負人に既存の調査結果の書面等を閲覧させることが必要となります。なお、詳細・明確な情報が無い場合は、請負人は既存の調査結果をそのまま用いることはせず、改めて必要な範囲の調査を行う必要があります。

 

 

② 「設計図書等により調査」の情報としては、次のようなものがあります。

  • 確認申請書(建設時期(確認済証の交付日)・建築場所・建築物の主要用途・工事種別・延べ面積・建築物の構造・建築物の階数・防火地域及び屋根、外壁、軒裏の仕上げなどの内容を確認)
  • 設計図書等(設計図、確認申請書等(確認済証)、竣工図、竣工図書類(材料納入時の写真等)、維持保全・改修記録等)
  • 特記仕様書(特記仕様書で、工種ごとに施工方法を指定しているので、石綿に関係する部分を抜き出す)
  • 建築物等に就業させている労働者の石綿ばく露防止のため石綿建材の把握や管理を目的とした調査の結果
  • 資産除去債務の計上のため石綿の使用の有無に関する調査結果
  • その他、過去の改修記録など

 

 

③ 発注者は、既存調査の情報を請負人に通知するに当たって、調査範囲を明確にすることが重要となります。具体的には、

  • 既存調査の対象建材がどのレベル(レベル1、2、3の材料)か
    例えば、レベル1(吹付け材)の調査のみであれば、請負人はレベル2(耐火被覆板、断熱材、保温材)及びレベル3(成形板)の調査を解体等前に行う必要があります。
  • 既存調査の対象部位はどこか。
  • 既存調査(分析)の実施時期はいつか。
    時期によって、石綿の規制対象の含有率が異なります。
  • 分析対象の石綿は、6種類全部か。
    一部の種類のみの場合があります。

 

 

④ 発注者は、これまでに石綿含有の有無の調査を行っていなくとも、以下について請負人に通知することが望ましい。
これは、請負人が事前調査を行う際に、労働者が石綿へのばく露を適切に防止できるようにするためとなります。

  • 吹付け材の使用されている場所吹付け材の劣化状態(天井裏の吹付け材の堆積状況を含む。)、封じ込めや囲い込みを行ったか否か(注:吹き付け材は、劣化が進行していることが特に想定される建材である)
  • その他、劣化の著しい建材(やむを得ず長期間点検していない煙突断熱材のように、劣化状況が不明であっても、劣化が著しいことが想定される建材を含む。)

 

 

⑤ 発注者は、建築物等の一部を改修した記録がある場合は、この情報も併せて通知する。
これは、改修した部位には無石綿材を使用していても 、改修しなかった部位は石綿含有材である可能性があり、使用状況の調査の折に、無石綿材かもしれない部位を調査して、全体を石綿なしとみなされるのを防止するためである。

 

 

⑥ 発注者は、機械設備等の分解や、廃棄を請負人に行わせるような場合は、建築物の解体等の際か否かにかかわらず、この機械設備の使用目的を請負人に通知することが望ましい
これは熱を伴う用途や気体や液体の漏れを防止する用途等として、機械設備等に石綿含有材を使用している可能性があるためである。
また、解体等作業に関わらず、エレベータの定期点検等のメンテナンス作業、機器の取り付け作業、その他石綿が使用された場所での作業についても、発注者は、その作業に従事する請負人の労働者が石綿にばく露することを防止するため、必要な情報を通知することが重要であるためです。

 

 

≪発注者の責務等≫

 

⑦ 発注者や元請等の注文者は、石綿等の使用の有無の調査、解体等の作業の方法、費用または工期等について、 請負人が 石綿障害予防規則等の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない。《安衛法第3条第3項、石綿則第9 条、大防法第18条の17第2項、第18条の20》
費用に関して、建設業に従事する者の災害を防止するため、発注者が施工時の安全衛生の確保のための必要な経費を計上すること、受注者である元請等から関係請負人へその経費が確実に渡るようにすることが求められます。その際、石綿の有無により石綿除去に伴う安全衛生経費など工事に要する費用は大きく変わりうることから、発注者は、当該費用を適切に計上することが重要となります。例えば、解体・改修工事を契約する前に事前調査を行い、石綿含有が判明した場合は、石綿除去等に伴う費用を適切に計上した上で、工事の発注手続を行い契約を行う。
また、解体・改修工事の契約後に事前調査を行った場合は、石綿除去等に伴う費用を適切に計上した上で変更契約を行う
工期に関して、例えば受注者に対し、工期に関する適切な情報提供を求め、その説明等を踏まえ工期を設定する等、適正な工期での請負契約を締結することが求められます。その際、石綿の有無により工期が大きく変わりうることから、工期設定時には、想定している施工条件(石綿除去工事の範囲、内容等)とともに、工程ごとの期間を明示し、それらの工程毎に区分して管理するなど、解体・改修工事や石綿除去工事に必要となる適正な期間(行政機関への届出期間等を含む。)が確保できるよう、必要な配慮を行う。

 

 

⑧ 発注者は、解体工事に当たって事前調査や除去工事を別の請負人に発注する場合などは、請負人の間での事前調査や除去状況の情報伝達が円滑に行くよう、また、工事の受注等のやりとりにより調査漏れ等を防ぐため、次の取組を行うことが望ましい。《平成25年1月7日 基安化発 0107 第 2 号》

  1. 発注内容の明示及び事業終了報告
    発注者及び請負人は、工事の発注及び受注に関して事前調査もしくは除去の対象とする範囲(建築物の全部または一部フロア等)を書面等により明示するとともに、事前調査もしくは除去後、発注者は請負人から実際に行った事前調査もしくは除去 の範囲、工事内容等を書面により報告として求めること。併せて、事前調査終了後及び除去工事終了後、関係者同席の下、現場での説明も求めること。さらに、契約において工事の範囲や報告事項等について明示すること。
  2. 情報共有手続き
    発注者は、他の関係請負人に対して上記の報告を説明する、もしくは報告書を交付すること。
  3. 報告書の保存
    発注者等工事に関係する全ての者は自ら行ったもしくは受領した事前調査結果や除去工事に関する報告書を解体工事期間中及び工事終了後も保存しておくこと。

 

 

⑨ 石綿を取り扱う場合は石綿作業主任者の選任などが義務づけられており、 例えば石綿含有不明の断熱材の劣化した煙突の灰出し口の掃除を行わせるような場合を含め、これら法令に基づく措置を履行できない業者に発注してはならない

 

 

≪発注時の参考事項≫

 

⑩ 石綿の有無について、書面調査・現地調査(目視、設計図書等による調査)を的確にできる者としては、

  • 建築物石綿含有建材調査者
  • 石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者
  • 日本アスベスト調査診断協会に登録された者(石綿調査診断士)

が挙げられる。
なお、解体・改修等の事前調査以外にも、様々な調査がある。円滑な実施のため、発注先に対して調査の目的や、調査の規模が明らかになる図面等を提示することが肝要となります。

 

 

⑪ 石綿の有無について、分析調査を的確にできる者としては、

  • 公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術評価事業」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者
  • 一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修修了者」や「アスベスト偏光顕微鏡インストラクター

がある。

 

 

⑫ 石綿含有の分析方法について、厚生労働省「アスベスト分析マニュアル」に示されている。石綿則に基づく分析は、次の流れで行われます。

  • まず定性分析を行い、石綿の有無を判定する
  • 石綿ありの場合は、定量分析により、石綿則の対象となる0.1%超か否かを判定する。
  • 定性分析で石綿ありと判定された場合において、定量分析を行わずに、石綿が0.1% を超えているとして扱うことも可能としている。《平成26年3月 31 日基安化発 0331第3号》

石綿障害予防規則第3条第2項に基づく分析の流れ

 

 

⑬ 書面および現地調査で石綿の有無が不明なときに、吹き付け材以外の建材は、⑪⑫の分析調査を行わずに、石綿則(や大防法)の調査結果として「『石綿あり』とみなす」ことも可能となっている。《石綿則第3条第2項、平成 26 年 5 月 29 日環水大大発第 1405294号》
その場合、当該建材は石綿であるとして、各法令に基づく措置を講じなければならない。《石綿則、大防法、廃棄物処理法、建設リサイクル法》

 

 

⑭ 除去完了の確認については、 隔離を解除する前に、石綿に関して一定の知見を有する者に確認させる。当該除去範囲の事前調査を行った事前調査業者、または外部の専門家に行わせることが望ましい。

 

 

⑮ 発注者は、 自らの労働者を試料採取に立ち会わせる場合は、吹き付け材等の試料採取時に労働者が石綿にばく露することを防止するため呼吸用保護具を着用させる等、所要の対応を行う(安衛法に基づく防じんマスクの購入や借用をあわせて発注することが考えられる)。

 

 




 

 


 

石綿障害予防規則

(事前調査)

第三条 事業者は次に掲げる作業を行うときは、石綿等による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)について石綿等の使用の有無を目視設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。
 建築物工作物 又は 船舶の解体破砕等の作業石綿等の除去の作業を含む。以下「解体等の作業」という。)
二 第十条(*1) 第一項の規定による石綿等の封じ込め 又は 囲い込みの作業

2 事業者は、前項の調査を行ったにもかかわらず当該建築物工作物 又は 船舶について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無を分析により調査し、その結果を記録しておかなければならない。ただし当該建築物工作物又は船舶について石綿等が吹き付けられていないことが明らかである場合において、事業者が、当該建築物、工作物又は船舶について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない

3 事業者は、第一項各号に掲げる作業を行う作業場には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。
一 第一項の調査(前項の調査を行った場合にあっては、前二項の調査。次号において同じ。)を終了した年月日
二 第一項の調査の方法及び結果の概要

 

(*1) 第十条

 事業者は、その労働者を就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物(次項及び第四項に規定するものを除く。)に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該吹き付けられた石綿等又は保温材、耐火被覆材等の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならない。

2 事業者は、その労働者を臨時に就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物第四項に規定するものを除く。)に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、労働者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させなければならない。

3 労働者は、事業者から前項の保護具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

4 法第三十四条の建築物貸与者は、当該建築物の貸与を受けた二以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた保温材、耐火被覆材等が損傷、劣化等により石綿等の粉じんを発散させ、及び労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、第一項に規定する措置を講じなければならない。

 

 





















 

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