石綿建材の材料レベル(アスベストの処理工事)
26-Feb-2021
石綿建材は、その種類により石綿則の適用が区別されています。いわゆる「材料レベル」と言われています。
下表の分類は、建築物等の解体等の作業における石綿粉じんの発じん性等を考慮したものです。「発じん性等」は、「密度(かさ密度も含む)の軽・重」、「石綿の種類」、「石綿含有率」等の因子と、施工後の劣化状況に関係する因子があります。「施工後の劣化状況に関係する因子」に関しては、施工時の状態(現場施工かどうか)、石綿以外の原料の種類、使用部位の環境状況(温度、湿度、気流等)等に依存しています。
上記のように、これらの因子が複雑に絡み合っているので、同じレベルに該当する石綿含有材でも、発じん性が異なることがあります。例えば、レベル 2 に該当する石綿含有材でも、レベル1に相当する場合もあり、また、レベル3に該当する石綿含有材でも、レベル2に相当する場合もあります。さらに、これらの因子以外に、建築物等の解体等における作業方法(手ばらしか、機械による解体か、等)によっても、発じん性の度合いが異なってきます。
石綿を取り扱う作業を行う際は、劣化状況のほか、作業方法といった因子等を十分に考慮する必要があります。
レベル分類
レベル分類 | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
対応石綿含有材 | 【石綿含有吹付け材】 ①吹付け石綿 ②石綿含有吹付けロックウール(乾式) ③湿式石綿吹付け材(石綿含有吹付けロックウール(湿式)) ④石綿含有吹付けバーミキュライト ⑤石綿含有吹付けパーライト |
【石綿含有耐火被覆材】 ①耐火被覆板 ②けい酸カルシウム板第二種 【石綿含有断熱材】 ①屋根用折版裏石綿断熱材 ②煙突用石綿断熱材 【石綿含有保温材】 ①石綿保温材 ②けいそう土保温材 ③パーライト保温材 ④石綿含有けい酸カルシウム保温材 ⑤不定形保温材 (水練り保温材) |
【その他石綿含有成形板】 ①石綿スレート ②けい酸カルシウム板第一種 ③住宅屋根用化粧スレート ④押出成形セメント板 ⑤窯業系サイディング ⑥パルプセメント板 ⑦スラグせっこう板 ⑧フロー材 ⑨ロックウール吸音天井板 ⑩石膏板(ボード) ⑪石綿円筒 ⑫ビニル床タイル ⑬その他石綿含有成形板 |
発じん性 | 著しく高い | 高い | 比較的低い |
具体的な使用箇所の例 | ①建築基準法の耐火建築物(3階建以上の鉄骨構造の建築物、床面積の合計が 200 m² 以上の鉄骨構造の建築物等)などの鉄骨、はり、柱等に、石綿とセメントの合剤を吹付けて所定の被膜を形成させ、耐火被膜用として使われている。昭和 38 年頃から昭和 50 年初頭までの建築物に多い。特に柱、エレベーター周りでは、昭和 63 年頃まで、石綿含有吹付け材が使用されている場合がある。 ②ビルの機械室、ボイラ室等の天井、壁またはビル以外の建築物(体育館、講堂、温泉の建物、工場、学校等)の天井、壁に、石綿とセメントの合剤を吹付けて所定の被膜を形成させ、吸音、結露防止(断熱用)として使われている。昭和 31 年頃から昭和 5 0 年初頭までの建築物が多い。 |
①ボイラ本体およびその配管、空調ダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けている。 ②建築物の柱、はり、壁等に耐火被覆材として、石綿耐火被覆板、石綿含有けい酸カルシウム板第二種を張り付けている。 ③断熱材として、屋根用折版裏断熱材、煙突用断熱材を使用している。 |
①建築物の天井、壁、床等に 石綿含有成形板、ビニル床タ イル等を張り付けている。 ②屋根材として石綿スレート 等を用いている。 |
レベル分類によるおおよその石綿則の適用の有無を下表に示します。
レベルにより異なるのは、届出、隔離の措置(隔離措置に変えて作業者以外の立入り禁止措置の場合もあり)、呼吸用保護具の種類の限定のみとなります。それら以外の措置は、すべてのレベルで適用されます。
レベル分類別の、おおよその石綿則の適用一覧表
レベル1 | レベル2 | レベル3 | |||||||
石綿含有吹付け材 | 保温材、耐火被覆材、断熱材 *1 | 成形板等 | |||||||
耐火・準 耐火建築 物の除去 |
その他 の除去 |
封込、囲 込(切断 等あり) |
囲込 (切断等 なし) |
除去 (切断等 あり) |
除去 (切断等 なし) |
封込、囲 込(切断 等あり) |
囲込 (切断等 なし) |
除去 | |
注文者の配慮 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
事前調査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
作業計画 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
14日前届出 | ○ | ||||||||
事前届出 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
特別教育 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
作業主任者 の選任 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
保護具着用*2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
湿潤化 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
隔離の措置*3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
作業者以外 立入禁止 |
○ | ○ | ○ | ||||||
関係者以外 立入禁止 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
*1 保温材、耐火被覆材、断熱材のうち、著しい粉じん発散のおそれがある場合が対象であり、密度等を考慮し、具体的には表「レベル分類」のものが対象となっている。それ以外は、レベル3の区分となる。
*2 呼吸用保護具等の選定
(1)石綿等の除去等の作業を行う際に着用する呼吸用保護具は、隔離空間の内部では、電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスク(以下「電動ファン付き呼吸用保護具等」という。)とすること。 隔離空間の外部で石綿等の除去等の作業を行う際に着用する呼吸用保護具は、電動ファン付き呼吸用保護具等又は取替え式防じんマスク(防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に規定するRS3又はRL3のものに限る。)とすること。ただし、石綿等の切断等を伴わない囲い込みの作業又は石綿含有成形板等の切断等を伴わずに除去する作業では、同規格に規定するRS2又はRL2の取替え式防じんマスクとして差し支えないこと。
(2)(1)の作業のほか石綿含有成形板等の除去作業を行う作業場所で、石綿等の除去等以外の作業を行う場合には、取替え式防じんマスク又は使い捨て式防じんマスクを着用させること。
(3)石綿等の除去等の作業に当たっては、保護衣又は作業衣を用いること。特に隔離空間の内部での作業においては、フード付きの保護衣を用いること。
*3 隔離の措置を行う場合は、集じん・排気装置を設置し、稼働中の集じん・排気装置からの粉じん漏洩の有無を確認する等。